「その一言」で、空気が凍りついていませんか?
「ねぇ、あの件、いつ頃できそう?」
オフィスの廊下で、あるいはチャットで。
ごく普通の会話として、何気なく投げかけたその言葉。
相手が「あ、えっと…すみません、まだで…」と、急に歯切れが悪くなったり、体を強張らせたりした経験、ありませんか?
こちらは決して怒っているわけじゃない。
ただ、スケジュールの見通しを知りたいだけ。
それなのに、なぜか相手を萎縮させてしまう。
「もしかして、私の一言が相手を追い詰めていたのかな…」
そんな風に、後になって少し胸が痛んだことのある優しいあなたへ。
今日は、管理する側もされる側も、もっと心が楽になる「進捗確認」の言葉選びについて、一緒に考えてみませんか?
悪気のない「いつ?」が、刃物になっていた
私も普段、仕事のスケジュールを管理する立場にいるので、チームメンバーに進捗を確認することは日常茶飯事です。
以前の私は、本当に軽い気持ちで聞いていました。
「これ、いつ頃終わりそう?」
「今日中にいけるかな?」
私としては、ただ「予定」を合わせたいだけの、事務的な確認のつもりでした。
「責めるつもりなんて全くないし、無理なら無理って言ってくれればいいのに」と思っていたんです。
でもある時、ふと気づきました。
私が声をかけると、部下がビクッとして、「すみません! すぐやります!」と謝ってくることに。
まるで、宿題を忘れた子供が先生に怒られているような反応です。
その時、ハッとしたんです。
私の「いつ?」という言葉は、相手にとっては「まだ終わってないの?」「遅いんじゃない?」という、無言の圧力(プレッシャー)として響いていたのかもしれない、と。
立場が上である私からの「いつ?」は、単なる質問ではなく、「締め切りの催促」や「能力の評価」のように聞こえてしまっていたのです。
悪気はなかったけれど、知らず知らずのうちに相手の心理的安全性を奪っていたことに気づき、深く反省しました。
「警察官」ではなく「伴走者」になる
進捗確認には、二つのスタンスがあります。
一つは、ルール通りに進んでいるかを監視する「警察官」のようなスタンス。
もう一つは、ゴールまで一緒に走る「伴走者(パートナー)」のスタンスです。
「いつ終わる?」という言葉は、どうしてもゴール(結果)だけを見ている「警察官」の響きを持ちます。
言われた方は、「取り調べ」を受けているような気分になり、「正直に遅れを報告したら怒られるかも」と防衛本能が働いてしまうのです。
一方で、私たちが本当に知りたいのは「正確な状況」ですよね。
もし遅れているなら、叱ることよりも、どうやって挽回するかを一緒に考えることが大切です。
言葉の矢印を「相手(You)」に向けるのではなく、「課題(It)」や「私たち(We)」に向けること。
「あなたが遅い」ではなく、「どうすれば私たちはゴールできるか」。
そう視点を変えるだけで、進捗確認は「詰問」から「作戦会議」へと変わります。
以前、仕事の成果を変える「考え方」の記事でもお話ししましたが、リーダーがプラスの空気を作ることで、チームのパフォーマンスは劇的に変わります。
「報告しても大丈夫だ」という安心感こそが、トラブルを未然に防ぐ一番の特効薬なのです。
相手がホッとする「進捗確認」3つの変換
では、具体的にどう声をかければ、相手を追い詰めずに状況を聞き出せるのでしょうか。
明日から使える、優しい言葉の変換リストを提案しますね。
ステップ1:「いつ?」を「順調?」に変えてみるのは、いかがでしょう?
いきなり締め切り(点)を聞くのではなく、今の状態(線)を聞いてみましょう。
「あの件、進み具合はどうかな? 順調?」
こう聞かれると、相手はイエス・ノーだけでなく、「実はここがつっかえていて…」と、プロセスの悩みを話しやすくなります。
会話の入り口を「報告」ではなく「相談」の形にするのです。
ステップ2:「困っていることはない?」と、助け舟を出してみるのは、いかがでしょう?
進捗を聞く目的を「遅れのチェック」から「障害物の除去」に変えてみませんか?
「何か止まっている原因はある? 私に手伝えることあるかな?」
こう声をかけられれば、部下は「自分の味方だ」と感じます。
責められているわけではないと分かれば、悪い報告ほど早く上げてくれるようになりますよ。
ステップ3:「調整したいから教えて」と、理由を添えてみるのは、いかがでしょう?
ただ聞くだけだと「監視」に思われますが、こちらの事情を話せば「協力」に変わります。
「来週のスケジュールを調整したいから、目安を知りたいんだけど」
「クライアントに一旦連絡を入れたいから、現状だけ教えて」
これなら、相手も「報告が必要な理由」が腑に落ちるので、変なプレッシャーを感じずに事実を伝えられます。
言葉は「武器」ではなく「握手」のために
仕事の進捗確認は、相手を追い詰めるためにあるのではありません。
お互いの現在地を確認し合って、「よし、ここからどう進もうか」と握手するためにあるはずです。
「いつ?」を飲み込んで、「順調?」と微笑んでみる。
たったそれだけのことで、オフィスの空気は驚くほど柔らかくなります。
私も明日の打ち合わせでは、まず「何か困ってない?」という一言から始めてみようと思います。
あなたのその優しさが、チームの心をふわりと軽くしますように。



コメント