こんにちは。「こころのコンパス」へようこそ。 専属編集者の私と、シロクマの「こころ」が、あなたの今日にそっと寄り添います。
「もっと早く言ってくれれば、一緒に解決できたのに……」 そんなふうに、後悔や寂しさを感じたことはありませんか?
今日は、「何でも相談して」が、なぜか機能しない理由。本当の信頼関係を築くための小さなヒントについて、少しだけ視界が明るくなるお話を届けさせてください。
【体験談】良かれと思った「ウェルカム」が、壁を作っていた
私自身、リーダーという立場になったとき、一番大切にしていたのは「風通しの良さ」でした。 デスクには仕切りを置かず、常に「何かあったら、何でも相談してね」と笑顔で声をかけていたんです。自分では、誰よりも話しやすい先輩でいるつもりでした。
ところがある日、後輩がずっと一人で抱え込んでいたミスが発覚しました。 事態はかなり深刻で、彼が夜遅くまで一人で悩んでいたことを後から知り、私はショックを受けました。
「どうして、あんなに『相談して』って言っていたのに、言ってくれなかったんだろう……」
自分の優しさが否定されたような、寂しい気持ちになりました。でも、よくよく振り返ってみると、彼が勇気を出して小さな相談をしてくれた時、私はパソコンを打つ手を止めずに「あぁ、それはこうしといて」と、数秒で会話を終わらせていたことに気づいたのです。
言葉では「ウェルカム」と言いながら、私の態度が「今は忙しいから、手短にしてね」という見えない壁を作っていた。その矛盾に気づいたとき、申し訳なさで胸が痛みました。
「相談」のハードルを下げる、日々の積み重ね
なぜ、言葉だけでは不十分なのでしょうか。 組織心理学の権威であるエイミー・C・エドモンドソン教授の著書『恐れのない組織』(英治出版)では、「心理的安全性」という概念が語られています。
「心理的安全性とは、対人関係においてリスクのある行動をとっても、このチームでは安全であるという確信のことである」
つまり、相談という「自分をさらけ出すリスク」を冒すためには、日頃からの絶対的な安心感という土台が必要なのです。
災害が起きたとき、普段一度も挨拶したことがない隣人に「助けて!」と叫ぶのは、とても勇気がいりますよね。それと同じで、トラブルが起きたときだけ「何でも言って」と言われても、心のシャッターはすぐには開きません。 日々の何気ない挨拶や、他愛のない雑談という「心の貯金」があって初めて、相談という一歩が踏み出せるようになるのです。
相手が安心して心を開くための3つのステップ
「この人になら、格好悪い自分も見せられる」と思ってもらうために。明日から意識できる具体的な聞き方のコツを3つご紹介します。
-
「100%の受容」を態度で示す 相談を受けたら、まずパソコンの手を止め、スマホを裏返します。「あなたの話を一番大切に聞いていますよ」というメッセージを、体全体で送ります。この「準備」だけで、相手の緊張は半分以上解けるはずです。
-
「否定」や「解決」を急がない 相手が話し始めたら、たとえ自分の意見と違っても「でも」「それは」と遮りません。「そうなんだね」「そう感じていたんだね」と、相手の感情をそのまま一度、自分の心の中に着地させます。
-
「事実」ではなく「勇気」にフォーカスする 内容についてアドバイスする前に、まずは「話してくれてありがとう。一人で抱えるのは辛かったよね」と、打ち明けてくれたその勇気を労います。この一言が、次の相談へと続くセーフティネットになります。
まとめ:日々のコミュニケーションこそが、最高のセーフティネット
「何でも相談して」という言葉は、魔法の呪文ではありません。 それは、日々の小さな積み重ねがあって初めて意味を持つ、「約束の確認」のようなもの。
大切なのは、相手が困る前から「あなたの存在を大切に思っていますよ」というサインを送り続けることです。
私も、これからは「相談の場」を設けること以上に、相手が話し始めた瞬間の「自分の表情や手の動き」を大切にしていきたい。部下や友人、家族が迷ったときに、真っ先に顔が浮かぶような、温かい場所でありたいと思っています。


コメント